JAXAとACSLの共同開発プロペラでドローンの騒音抑制効果確認、「レベル4」解禁受け物流など活用に弾みか

JAXAとACSLの共同開発プロペラでドローンの騒音抑制効果確認、「レベル4」解禁受け物流など活用に弾みか

音圧エネルギー換算で従来比最大4割減、耳障りな音も軽減

宇宙航空研究開発機構(JAXA)とACSLは3月16日、JAXA独自技術の低騒音プロペラ「Looprop(ループロップ)」の設計手法の高度化に関する共同研究で、LoopropをベースにACSLの国産ドローン「SOTEN(蒼天)」に搭載する低騒音プロペラ「Looprop for SOTEN」を共同開発し、静音効果を確認したと発表した。

「Looprop」はJAXAが静音を目指して独自に開発した、世界でも例を見ないユニークなループ状の形(8の字状)をしたプロペラ。4枚羽の翼の位置を寄せて先端のカーブをつなげた形状をしており、JAXA航空技術部門の嶋英志氏が開発した。

回転の際に周囲の空気とプロペラが穏やかに接するため騒音が静かになる上、音質も耳障りな音が軽減される効果があるという。


新規開発プロペラを搭載したSOTEN


新規開発プロペラ「Looprop for SOTEN」試作品

政府が昨年12月、有人地帯上空でドローンが目視外飛行する「レベル4」を解禁したのに伴い、市街地や住宅の上空をドローンが飛ぶケースが増えることが予想されるため、ドローンから発生する音を低減させることが重要な課題になっている。

JAXAとACSLは今回得られた成果を基に、引き続き実用化へ研究を進める構え。実用化できれば、レベル4下でドローンを物流などに応用することに弾みが付きそうだ。

JAXAとACSLはレベル4社会の音の課題を解決すべく、LoopropをSOTEN向けに最適化設計した「Looprop for SOTEN」の試作品を共同dで開発。最適化設計により、従来型プロペラ(現在のSOTENのプロペラと同形状)と比較すると、同等の推力を維持したまま静音性能を達成し、人の不快感が軽減されたことを確認した。


PA指標による標準プロペラと新開発プロペラの比較 新開発プロペラの人間の感覚的な静音性が数値データで明確に示されている(千葉大学工学部・劉浩研究室 Jianwei Sun氏による同大とJAXAの共同研究成果)

屋外での効果検証飛行試験の結果は、通常の2枚羽プロペラとの音圧レベルの比較で、最大で2.3dBA音圧が低下(音圧エネルギー換算で41%減少)したことを確認。音質も耳障りさの主因となる倍音成分によるプロペラの特徴的な音が減少し、より自然界の騒音の音質に近くなる性質と相まって、全体の静音性が向上していることも判明した。


計測位置ごとの音圧レベル(dBA)。効果を正しく計測するため、従来型プロペラはLoopropと同じ材料で製造したものを使用


周波数分析結果(水平距離5m・高度3m位置)

(藤原秀行)※写真はACSL提供

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