運航支援システムなどデジタル技術で海運領域の脱炭素促進

運航支援システムなどデジタル技術で海運領域の脱炭素促進

フィンランドのNAPA・クオサCEOが説明

船舶の設計・運航支援システム開発を手掛けるフィンランドのNAPAのミッコ・クオサCEO(最高経営責任者)は10月3日、東京都内で記者会見し、海運領域の脱炭素支援の取り組み状況などを説明した。

クオサCEOは国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会(MEPC)で今年7月、海運領域の温室効果ガス排出削減に関する目標を改定し、「2050年頃までに排出ゼロ」へ強化する方針を決めたことに言及。「日本の海運業界は今すぐ具体的な行動を起こし、(排出量削減につながる)イノベーションのための協調を図っていく必要がある」と指摘した。

その上で、「われわれは船舶設計の初期の段階から最終的な運航まで、全体的なライフサイクルにわたってステークホルダーが自信を持って意思決定し、協力できるような枠組みを提供していきたい」との考えを説明。NAPAが展開している運航支援システムなどのデジタル技術を生かして日本の海運会社の運航ルート・航海速度最適化などを後押しし、排出削減を果たしていくことに強い意欲をのぞかせた。


会見後の撮影に応じるクオサCEOと日本法人NAPA Japanの水谷直樹社長

「日本の海運業界のイノベーションパートナーに」

クオサCEOは、温室効果ガス排出抑制へ環境負荷の低い新たな船舶燃料の開発が進められていることについて「非常に重要な手段であることに間違いはないが、今すぐ使えるようになるわけではないので、他の領域でできることをやっていかなければならない。例えばエネルギー効率化技術を取り入れて航海の最適化を図っていくことなどだ」と説明した。

そのため、「われわれは日本の海運業界が持続可能性を重視する中でイノベーションパートナーとして、また技術を提供するプロバイダーとして役割を果たしていきたい」との考えを表明。

日本でこれまでに、2014年にNAPAを買収して親会社となっている日本海事協会や丸紅と共同で、NAPAの航海最適化に関するシミュレーション機能を生かして温室効果ガス排出削減の効果を計ったり、住友重機機マリンエンジニアリングなどと組み、円筒形の帆と航海最適化システムを活用することでCO2排出を28%減らせると見積もったりしたことなどを解説した。その上で、さまざまなステークホルダーと連携していく姿勢を見せた。

NAPA自身のシステムで世界の5万隻に及ぶ船舶の運航情報などのビッグデータを保有していることに触れ「こうしたデータを生かせば日本の海運業界の脱炭素化に貢献していける」と自信を見せた。

(藤原秀行)

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