AI活用したマッチングなど想定、未経験者に提案も
人材大手パーソルグループは9月14日、AIやデータ活用による就労者支援および労働力不足への対応をテーマとした記者説明会を開いた。トラックドライバー不足に直面する物流分野をはじめとする現場労働力の人手不足に対し、人材紹介事業の新たなモデル開発に着手したことを明らかにした。
パーソルデジタルベンチャーズを中核会社に据え、グループのデータや顧客基盤を生かした未来の事業モデル構築を進める「R&D Function Unit」(R&Dユニット)を組織。スポットワーカー向けプラットフォームや人材採用支援など、デジタル化によって今後の成長余地が高い領域に注力する。
説明会でパーソルデジタルベンチャーズの村井宏行社長は「既存事業の延長では解決できない社会課題に挑み、未来の事業を作っていく役割」とR&Dユニットの立ち位置を解説した。
村井氏によれば、「社会課題」は深刻化する国内の労働力不足と設定している。国立社会保障・人口問題研究所によると、20~64歳の労働人口は今後20年で約1330万人減少すると試算されていることを踏まえ、村井氏は「企業は生産性を高め、働く人1人1人が活躍し続けられる環境を作ることが不可欠になる」と警鐘を鳴らした。
また、建設や物流、サービスなど、現場労働で消費者の日常生活を支えている「フロントラインワーカー」(FLW)不足にどう対応するかが、今後の鍵を握ると指摘。「一方向の解決策だけでは難しい。AI活用で未経験者の就労機会を創出するなど、多角的なアプローチで挑む必要がある」と強調した。
説明会では、グループで新規事業創出を手掛けるパーソルイノベーションが、同ユニットでドライバーを含めたFLW向け人材マッチング事業に乗り出していることも紹介した。
同社の大浦征也社長は「これまで求人メディアやハローワークで採用ニーズを満たしていた領域だったが、いよいよ人が集まりにくくなり、人材紹介事業でのアプローチが可能な市場になった」と現状を分析した。
〝未開の地〟だったFLW領域で、人材紹介事業としてどんなサービスを展開するのかについて、大浦社長はAIを活用したマッチングモデルを目指すと強調。AI活用のメリットとして大きく2点を挙げた。
1つはAIの得意領域の効率化で、一般的な人材紹介事業の利用単価は、これまで低コストのハローワークや求人メディアを人材獲得ツールとしてきたFLW業界が許容しにくい水準となっているが、人手で行っていたマッチングプロセスを徹底的にAI化することで、許容できる水準に乗せることが可能になるとの見解を示している。
もう1つは、FLW業界の門をたたいてこなかった未経験人材がAIによって〝発掘〟される可能性について言及。これまでFLW業界は未経験者が飛び込むには心理的ハードルがあったほか、年収が比較的低いこともあり、求職者自身が就労先を選択するハローワークや求人メディアではFLW業界の求人に応募しようという動機付けが難しかったという。
大浦社長は「人材紹介であれば、例えばドライバー未経験者に『あなたの特性はドライバー業務に合っている』と提案できる。面接をAIがしてくれるというだけでなく、AIによる提案が求職者に気づきを与えられるのであれば、人材紹介の関わる意義が高まる。自主的にFLWを選んだ求職者はエンゲージメントも高い」と自信を見せる。
同社はこうした認識に基づき、AIを活用したモデル開発を推進。グループの求人サイト登録者がFLW業界のAIサービスと円滑につながり、AIによる支援計画生成やキャリア提案、面接対策などができるようなシステムの開発を進めており、実証実験に着手した段階という。
大浦社長は「FLW未経験の求職者が、なぜFLWに向いているといえるのか。どのような意義付けがされれば、応募動機へとつながるのか、こういったアルゴリズムの研究を開発組織『HRサイエンス研究所』で進めている。国内における労働シフトの1つのきっかけとしていきたい」と話している。

説明会に登壇した大浦社長
(佐久間修志)










