有力デベロッパーのキーパーソンが語る展望と戦略⑥・最終回
先進的物流施設開発を手掛ける主要プレーヤー6社の経営幹部や担当者がこのほど、当社のインタビューに相次ぎ応じた。
最終回となる第6回はオリックスの小山幸男物流事業部長にスポットを当てる(月刊ロジスティクス・ビジネス2018年10月号掲載インタビュー記事を再構成の上、掲載した。詳細は同誌を参照)。
小山氏は、物流施設開発の最近の潮流に関し「一つの着目すべき大きな流れとして、物流が持つ社会的インフラという重要な機能を踏まえ、行政が物流施設開発を促進するためにさまざまな規制緩和を進めている」と指摘。同社としても地域活性化につながる施設開発を提案できるよう努めていることを明らかにした。
開発のペースについては、従来と同様、年間4~5件の開発用地取得を目指していく姿勢を示した。
同社は今年5月、テナント企業の人手不足対策支援の一環として、産業用ロボットのレンタルを手掛けるオリックス・レンテックと組み、自社開発の物流施設に入居しているテナント企業向けに、物流ロボットを半年間無償でレンタルするサービスを発表した。
小山氏はその背景を「匠の技のような部分の継承が非常に難しくなっていて、オペレーションを支障なく進めるには当社がレンタル対象としているような物流ロボットなど各種機器が絶対必要になってきている」と解説。「早期に第1号案件を実現できるよう、引き続き鋭意取り組んでいく」と語り、全力で普及促進を図る姿勢をPRした。
無償レンタルだけでなく、システム構築なども同社が担うことでテナント企業が物流ロボット導入の初期コストを抑えられるとの意義をアピール。同時に、オリックスとしても物流ロボットに関する稼働データを物流施設開発業界で先駆的に収集・分析し、今後の展開につなげていけるとの狙いを明かした。
有望な庫内労働力としてシニア層獲得を目指す
小山氏は、物流施設の差別化へ取り組んでいる実例として、現在開発中の「松伏ロジスティクスセンター」(埼玉県松伏町)に言及。有望な労働力としてシニア層を取り込めるよう、現場作業の負荷軽減へ機械化を積極的に支援するとともに、フィットネスルームや多目的室を導入し、仕事をしながら健康増進やコミュニティー活動もできるよう配慮する構想を立てていることを説明した。
さらに、オリックスグループがリースや不動産、金融など多様な事業を展開していることを踏まえ、「ヘルスケア事業のさまざまなノウハウや技術を(物流施設の機能改良へ)取り入れることが考えられるし、他にも例えば生命保険と何か連携ができるかもしれない。物流施設自体はシンプルな仕組みだが、そこにさまざまな付加価値を足し算していけるのは強み」と説明。グループの抱えるリソースを最大限生かしていくことに強い意欲を見せた。
今後の新たな取り組みとしては、東京の湾岸部などの好立地で大型のマルチテナント型物流施設を開発、新たな付加価値を取り入れる象徴的な存在にしていきたいとの思いを示した。
(聞き手・藤原秀行、写真・中島祐)
インタビューに答える小山氏
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