【独自】「マッスルスーツ活用で物流企業の人材獲得を後押ししたい」

【独自】「マッスルスーツ活用で物流企業の人材獲得を後押ししたい」

東京理科大発ベンチャー・イノフィスの折原CEO、現場作業の負荷軽減に意欲

東京理科大学発ベンチャーで、物流や農業、製造業などの現場作業負荷を軽減するマッスルスーツの開発・販売を手掛けているイノフィスの折原大吾社長CEO(最高経営責任者)は、東京都内で開催した新製品「マッスルスーツGS-BACK」の記者発表会で、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。

折原氏は、マッスルスーツを物流業界に普及させて効果も実感してもらい、マッスルスーツを現場で使っていることが人材を集める上で有利になる状況を作り出していきたいとの考えを表明。物流現場などで働く若い人にも装着してもらうことで腰痛といったトラブルの発生を防ぎ、医療機関に通う時間を減らして生活の質(QOL)を高めることにも役立ててもらいたいと語り、「物流の世界を変えることにぜひチャレンジしていきたい」と訴えた。


記者発表会で撮影に応じる折原社長CEO(左)。右はイノフィス創業者で取締役最高技術者の小林宏・東京理科大工学部機械工学科教授

中堅・中小企業でも利用しやすく

「GS-BACK」はピッキングや積み込み・荷下ろしなど、歩いたりしゃがんだり、立ち上がったりする動作を伴う手荷役作業が発生している現場向けを想定。リュックのように背負い、腰のベルトを締めて、ももの部分をサポートするパッドを前に回して使う。イノフィスの主力製品「マッスルスーツEvery(エブリィ)」に比べ、荷役中の動作をしやすくしているのが特徴。

折原氏は、Everyは装着した人の腰や腕などを強力にサポートし、重量物を持ち上げる際などに体へかかる負荷を減らせるのが強みで、従来品より価格を3分の1程度まで引き下げたこともあって利用者を獲得しているが、その分、しゃがんだり歩いたりがしづらく、性能とトレードオフになっていたと説明。「物流現場の方にもニーズは結構あり、実際に装着されるとEveryのアシスト力は評価していただけるものの、動きづらさとてんびんにかけた時に、なかなか成約までに至らなかった」と語った。

そうした点を考慮し、動きが多いピッキングなどの作業支援に使えるよう、GS-BACKを開発したと説明。「物流の現場は暑いことも多いので、マッスルスーツの背中の部分に空間を広く取って暑くなり過ぎないようにするなどの改良を行った」とアピールし、現状は受注全体の10%程度となっている物流業界により広く使ってもらえることに強い期待を見せた。


「GS-BACK」

折原CEOはまた、物流現場は自動化・省人化の動きが広がっているものの、荷物の大きさや荷姿が多種多様なことなどから、どうしても完全な自動化は難しく、人手が必要な作業があると解説。「そうした現場は作業負荷が大きいため、働いておられる方に辞められるとその後の採用が大変。マッスルスーツを活用していただくことで腰などを痛めるシーンをできるだけ減らしたい。ゆくゆくはこうしたマッスルスーツ、アシストスーツを導入していること自体がリクルートしやすくなる効果を生み出せるところまでつなげていきたい」と意気込みを見せた。

併せて、実際にGS-BACKを試してみた物流現場の担当者から、若い従業員は腰痛などへの意識が低いと言及していたことを紹介。マッスルスーツの利用が進んでいる介護の現場では、土日に自分の時間を使ってマッサージや指圧に行ったり、疲れ切ってしまっていたりすることがあると指摘。「物流業界も含めて、若い方が作業負荷軽減をしっかりと守ることで、休みの際はしっかり休み、自分の時間を大切に使える環境を実現していくお手伝いをしていきたい」と語った。

GS-BACKは販売価格を税込み15万9500円に抑えたことにも触れ、「大企業だけでなく中堅・中小企業でもいかにして通常のオペレーションの中で実装してもらうかを考えると、どれだけ手軽かが重要。アシスト力をいかにしっかり作るかという点と価格のバランスがあるが、そこは両立したい」と強調。中堅・中小の物流企業の現場にも取り入れてもらえるよう性能と価格のバランスを訴求していきたいとの意向を示した。

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事