【現地取材】東京・平和島のTRC流通センターでトラックなどの自動運転技術実用化後押しする「協議会」発足

【現地取材】東京・平和島のTRC流通センターでトラックなどの自動運転技術実用化後押しする「協議会」発足

構内の道路や屋上活用し実証実験、情報交換など可能な専用スペースも提供

完全自動運転EV(電気自動車)の開発を手掛けるスタートアップのTuring(チューリング)、自動運転ソフトウェアの開発を担う米Applied Intuition(アプライド・インチュイション)、ソニーとホンダが共同出資しているソニー・ホンダモビリティ、自動運転向けのAIソフトウェア開発に取り組んでいる英国のスタートアップWayve Technologies(ウェイブ・テクノロジーズ)の日本法人Wayve Technologies Japan、日本政策投資銀行(DBJ)、DBJ系シンクタンクの日本経済研究所(JERI)、三菱地所系の東京流通センター(TRC)の7社は5月22日、TRCが東京・平和島で運営している物流拠点「TRC東京流通センター」で、自動運転技術の実用化を後押しする任意団体「平和島自動運転協議会」を正式に発足させた。

協議会の会員企業は東京流通センター構内の道路や屋上などを使い、実際の走行シーンに近い環境で自動運転技術に関する実証実験やデータ取得を行うほか、同じく東京流通センター内に新設した会員企業同士が情報交換などに使える専用スペース「HeAD Light Field」(ヘッドライトフィールド)を活用。企業が協業して新技術開発を図るオープンイノベーションの場として機能させる。

 
 

自動運転トラックを早期に実現し、「物流2024年問題」やトラックドライバー不足など物流領域の課題解決を後押ししていくことも念頭に置いている。


専用スペース「HeAD Light Field」


東京流通センター内のA棟(左)とB棟の間の車路など実験場所として活用する予定

東京流通センター内で同日開催した記念式典で、協議会の事務局を務めるJERIの小林純子執行役員は「自動運転という新しい技術の開発により、(物流2024年問題など)現在の閉塞状況を根本から変えていく可能性を秘めているものと考えている。(自動運転実用化に向け)課題は大きくて1つの企業や機関では(解決が)なかなか難しい。協議会が一過性の集まりではなく、今後継続的に取り組みを進め、社会の変革につなげていく機会として活用いただきたい」と説明。

TRCの依田渉運営管理部長は、東京流通センター構内は一般の歩行者と交わる機会が非常に少なく、地域住民から反発や懸念が起こりにくいことや、24時間365日稼働していることなどから、自動運転の実証実験などに活用しやすいとメリットを強調した。

参加各社の代表として、DBJの箕輪留以常務執行役員は「皆様と一緒に自動運転の社会実装に一歩を踏み出せることを大変うれしく思っている」とあいさつ。チューリングの田中大介取締役COO(最高執行責任者)は「大量のデータを集めるために(東京流通センターのような設備が)われわれにとってはすごく大切なものになっている。平和島から世界へ、との思いで頑張っていきたい」と語った。

 
 

アプライド・インチュイションの中島謙二アジア太平洋営業統括は「社会問題の解決に向け、いろんな会社様と連携していければ、と思っているのでよろしくお願いしたい」と訴えた。ソニー・ホンダモビリティの岡部宏二郎取締役専務は「この機会に皆さんと協力し、モビリティ業界のイノベーションに貢献したい」と決意を述べた。

ウェイブ・テクノロジーズ・ジャパンの小舩祐介Head of Operations Japanは「物流、モビリティ業界が直面する課題を解決するところに貢献したい」とアピール。TRCの有森鉄治社長は「輸送において高速道路だけではなく、一般道も含めた自動運転の実現に協力させていただきたい。協議会としての発展性を持った上で社会課題解決に貢献していきたい」と意欲を見せた。

協議会は運送事業者や荷主企業、損害保険会社などにも参加を呼び掛けていく構え。政府が示している自動運転技術の社会実装目標と歩調を合わせながら、自動運転技術の着実な実用化を目指す。


記念式典に参加した(左から)JERI・小林氏、DBJ・箕輪氏、チューリング・田中氏、アプライド・インチュイション・中島氏、ソニー・ホンダモビリティ・岡部氏、ウェイブ・小船氏、TRC・有森氏

(藤原秀行)

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