サプライチェーン構築に貢献、エネルギー普及を後押し
川崎重工業は6月6日、大型液化水素運搬船用の貨物タンク(CCS、Cargo Containment System)の技術開発を完了したと発表した。
本件はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業「水素社会構築技術開発事業・大規模水素エネルギー利用技術開発・液化水素の輸送貯蔵機器大型化および受入基地機器に関する開発」の取り組みとして、大型液化水素運搬船用CCSの性能確認用タンクの設計・製作と性能確認試験を進めてきた。
水素の大量海上輸送には、マイナス253℃に冷却し、体積を気体の800分の1とした液化水素を長期間安定して保冷する必要がある。そのため、内容積に対して外表面積が小さく、外部からの侵入熱を低減できる球形状で、かつ内外二層構造による二段階の断熱によって高い断熱性能を実現する、同社独自の新構造CCS「CC61Hタイプ」を開発した。
今回設計・製作したCC61Hタイプの試験用タンクは、計画中の大型液化水素運搬船用CCS(タンク容量:4万㎥/基×4基、合計搭載容量16万㎥)の実物に近い規模で、構造材や防熱材の厚さなどを実船に即した構成寸法とすることで、組立・溶接・断熱材の施工性など新構造の成立性を検証。
また、開発の最終段階として試験用タンクを用いたガス置換・冷却・昇温試験を実施し、タンク内の大空間が不活性ガスにより効率良く置換できることや、計画通りの断熱性能が得られることを確認した。
今後2030年までの液化水素サプライチェーン商用化実証計画に合わせ、大型液化水素運搬船の実用化を引き続き進めることで、水素エネルギーの普及と、カーボンニュートラルの実現に貢献することを目指す。
16万㎥3型 液化水素運搬船(タンク搭載イメージ図、プレスリリースより引用)
(藤原秀行)