投資総額900億円、アジア太平洋地区で過去最大規模
DHLエクスプレスは11月14日、香港のセントラルアジアハブ（Central Asia Hub、CAH）の拡張工事が完了し、全面稼働を開始したと発表した。世界貿易の回復に向けた体制を強化するのが狙い。
2004年の開設以来、複数回にわたる工事を経て、通算の投資総額は5億6200万ユーロ（約）に到達。同社はDHLがアジア太平洋地区における今後の成長機会を確信していることを表しており、国際航空ハブとしての香港の発展へのコミットメントでもあると強調している。
開設セレモニーに参加した香港政府とDHLグループの関係者ら
2024年までに完成予定の香港国際空港第3滑走路の立ち上げに合わせて、施設の拡張に着手。増強工事を終えたハブは、貿易と通商を促進する世界の航空センターとしての香港の役割をさらに強調する。
拡張工事を完了したDHLセントラルアジアハブ（いずれもDHLエクスプレス提供）
セントラルアジアハブは、アジア太平洋地域と汎珠江デルタ地域の主要都市まで飛行機で4時間以内という戦略的なエリアに立地。DHLエクスプレスのアジア太平洋地区の航空ネットワークは、香港のセントラルアジアハブ、上海の北アジアハブ、シンガポールの南アジアハブ、バンコクハブの4カ所のハブに支えられたマルチハブ戦略に基づいて運営している。
各ハブはアジア太平洋地域にある約900のDHLエクスプレス施設と接続しており、セントラルアジアハブには、週200便以上の専用フライトが発着。アジア域内では1日約690便に上る航空便も活用している。
倉庫総面積が従来比50％増の4万9500㎡に拡大。最新鋭の自動仕分けシステムを導入し、ハブのピーク時の処理能力は70％近く向上し、1時間当たり12万5000件の貨物処理が可能になった。さらに、フル稼働時の年間総トン数は50％増の106万トンに達する見込み。04年のハブ設立当初の出荷量の6倍に相当するという。
業務の効率性と正確性を追求する同ハブは、香港のエクスプレス貨物業界で初めてコンピューター断層撮影（CT）X線スキャン技術を導入した。このX線スキャナーにより検査速度が2倍速に向上し、禁止アイテムの迅速かつ正確な検出も可能になっている。
ハブ施設の屋根には3450枚のソーラーパネルを設置し、太陽光発電の総発電量は推定年間168万kWh。年間850tのCO2排出量削減に相当すると説明している。
DHLアジア太平洋地区で初めて二次電池電力貯蔵システム（BESS）を導入したことから、香港国際空港にとってもBESSを導入した初のビジネスパートナーとなる。このシステムにより太陽光発電の余剰電力を蓄え、必要時に放出することで、年間12万5000kWhの電力を節約すると見込む。これは49tのCO2排出量削減に相当するとみている。
その他、電動フォークリフト、LED照明、高効率空冷式冷却機など、環境に配慮した設備を採用し、温室効果ガスの排出削減を図っている。
（藤原秀行）
