消費者庁が近く見解表明へ、自主的対応要請を検討
消費者庁は近く、インターネット通販などで浸透している「送料無料」表示の見直しに関する見解をまとめる。
送料無料表示については、物流事業者は「ただで荷物を運んでいる」と消費者の誤解を助長し、運賃適正化の妨げになっているなどと反発している一方、通販事業者の間では「消費者の間で広く定着している」と存続を求める声が根強い。
消費者庁はこれまで9回にわたり、物流事業者や通販事業者、消費者団体ら関係者と意見交換会を重ねてきた。関係者間で主張の隔たりが大きく、歩み寄りには相当な時間がかかるとみられるため、消費者庁はひとまず送料無料表示を法的に規制することを見送り、通販事業者らに自主的な対応を要請する公算が強まっている。
政府は今年6月に取りまとめた「2024年問題」への対応策「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべき」との観点から「送料無料」表示の見直しに取り組む方針を打ち出していた。
消費者庁は政策パッケージ決定直後の今年6月から意見交換会を開催。全日本トラック協会は席上、「送料は運送の対価として収受するものであり『無料』ではない」「『輸送にはコストがかからない』という間違った考え⽅を植え付けることになる」などと主張した。
半面、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が代表理事を務める新経済連盟は「別の表現への置き換えは様々な理由から困難」との見解を表明。インターネット関連企業などで構成するセーファーインターネット協会も「『送料無料』表示を見直すことにより、『運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・ 反映される』ことになる根拠などを示していただきたい」などと疑問を表明、表示見直しに慎重な姿勢を明確にした。
11月の第9回会合でも、委員から「消費者が実情を正しく認識し、エシカル消費につなげるためにも『送料無料』表示はやめ、少なくとも 『送料は当社負担』など、『運ぶ・届ける』で発生する負荷を消費者が認識できる表現に改めてほしい」といった多様な意見が出された。
関係者からは「物流業界の主張はよく理解できるが、実際問題として通販事業者を法的に制限するのは相当ハードルが高い」と苦悩する声が漏れる。消費者庁は送料無料表示に関する見解を公表する際、通販事業者らに対し、物流事業者が無料で運んでいると消費者に誤解させない説明の追加など、自主的な対応を講じるよう求めていくことを検討しており、近く最終判断するとみられる。
(藤原秀行)