【独自】ファミリーマートとフューチャーアーキテクト、“データドリブンで物流変革”促進

【独自】ファミリーマートとフューチャーアーキテクト、“データドリブンで物流変革”促進

出荷履歴などの情報活用するPF構築、店舗配送ルート最適化目指す

※本文を一部差し換えました

ファミリーマートとフューチャー子会社でIT領域のコンサルティングを手掛けるフューチャーアーキテクトが連携し、サプライチェーン変革を推進している。フューチャーアーキテクトは全国のファミリーマート店舗への商品配送を最適化するため、2023年12月に各商品の出荷実績などさまざまな情報を集約できるデータマネジメントプラットフォームを構築。ファミリーマートが独自に開発した、AIを活用したシミュレータと連携し、各温度帯のコース設定最適化を図っている。

これまで各現場で蓄積していながら、必ずしも有効活用されていなかった情報を部門横断的に共有することで、物流の業務効率化を抜本的に推し進めるのが狙いだ。現場の物流事業者任せではなく、荷主企業とITパートナーがタッグを組んでいるのも特徴だ。政府が推し進めている、物流情報の共有・有効活用の先駆的な取り組みとして成果が注目される。

定温カテゴリー商品の配送コースやトラックを1割程度抑制

ファミリーマートは全国各地に展開している複数の物流センターから1万6千以上の店舗へ商品を毎日、協力物流会社がトラックで届けている。運行している車両はファミリーマート専用ではないものも含めると1日当たり約5千台に上る。

朝や昼、夕方とあらかじめ決められた時間帯に、弁当や総菜、牛乳などの「定温」「チルド」、日用品や加工食品などの「常温」、アイスクリームや冷凍食品などの「冷凍」と異なる温度帯で管理が必要な商品をそれぞれ店舗へ送り届けている。特に弁当などは食事の時間帯のピークに欠品させないことが、コンビニ事業の生命線を握っている。

ただ、以前は物流センターの担当者が経験や勘を生かして各店舗への配送コースを設計していた。担当者としては店舗への到着遅延を避けたいため、余裕を持った配送コースを作成することがあり、結果として指定の時間よりも前に店舗へ着くことが見込まれる場合はルートの途中でトラックドライバーが待機を強いられるなど、必ずしも効率的に複数の店舗を回り切れていない状況が発生していた。

旧来も既成のAIルート作成ソフトを使っていたが、精度がそれほど高くなく、結果として人間の判断に委ねる部分が依然大きかった。ファミリーマートはそうした状況を改善しようと、22年に自社で走行実績などのデータを踏まえてAI(人工知能)が最適なコースを自動的に割り出す独自の「配送シミュレータ」を開発した。

物流センターや加盟店の担当者らとも調整を重ね、まず22年10月、全国の定温センターで本格的に稼働させた。定温カテゴリーの商品の配送コース数とトラックの台数をそれぞれ1割程度減らすことができた。配送時の温室効果ガス排出量の削減にもつながった。

配送シミュレータではじき出した案を基に、物流センターの担当者らと協議を重ね、正式に配送コースを決定する。現状ではおおむね半年ごとに配送コースを見直している。明確なエビデンスを基に算出した配送コースの提案だけに、ファミリーマートの物流本部は議論する上で説得力も高められると見込んでいる。

ファミリーマート物流本部物流企画部の松田裕司副部長は「現状でも1割減らせた状況が継続できており、効率化の成果が上がっている」と言う。23年10月には冷凍配送への導入をスタートし、常温のカテゴリーでも採用を始めている。


ファミリーマート・松田氏

IT戦略パートナーとして支援

ファミリーマートは2021年、フューチャーアーキテクトと連携し、サプライチェーン変革に乗り出した。フューチャーアーキテクトがファミリーマートのIT戦略パートナーを務め、先進技術を取り入れて配送や調達の効率化などを図っている。

ファミリーマートは「物流2024年問題」やトラックドライバー不足の深刻化など、物流を取り巻く環境が年々厳しくなっているのを前に、商品配送の最適化などのサプライチェーン変革をさらに推し進めることにした。大きな役割を果たそうとしているのが、フューチャーアーキテクトの力を借りて23年12月に構築を完了したデータマネジメントプラットフォーム「配送DMP(Data Management Platform)」だ。

WMS(倉庫管理システム)から全温度帯の商品の出荷実績など、協力運送会社のTMS(運送管理システム)から全国の店舗から車両が駐車できる位置など、物流センターから位置やバース数などの情報をそれぞれ配送DMPに日々集めている。蓄積したデータは配送シミュレータが活用可能な形にして提供することで、これまで以上に精緻に効率的なコース設定ができるようになると想定している。


「配送DMP」のイメージ(プレスリリースより引用)

ファミリーマート物流本部物流企画部の佐々木英光物流企画グループマネジャーは「弊社と協力物流事業者さんがそれぞれ個別で管理してきた情報を配送DMPに集めることで、より有効活用できるようになる。物流本部と現場の物流センターなどで情報を共有することも可能」と解説する。

同社システム本部商品・物流システム部の本橋哲志SCMシステムグループマネジャーは「例えば、店舗でトラックをどの場所に止めればいいかといった細かな情報は、物流センター側にはあったが本部側には共有ができていなかった。配送DMPを活用することで貴重な情報を生かせる。店舗は新規出店など常に動きがあるので、そうした情報をリアルタイムで把握できる意義は大きい」と力を込める。

フューチャーアーキテクトで配送DMP構築に携わった赤木靖弘物流サービス事業部ディレクターは「正しいデータを現場からどれくらい集められるかが大きなテーマ。シミュレーションの精度にダイレクトに影響する」と強調する。冷凍車はファミリーマート専用ではなかったため、協力運送会社と連携し、センサーを新たにトラックに積載、走行中の温度変化のデータを収集するなど、多岐にわたるデータをつかめるようファミリーマートとフューチャーアーキテクトで工夫を重ねた。


ファミリーマート・佐々木氏


ファミリーマート・本橋氏


フューチャーアーキテクト・赤木氏

ファミリーマートの松田氏と佐々木氏は「せっかく配送のデータが自動的に蓄積できる仕組みを立ち上げられたので、物流本部でいつでも分析できるようなプラットフォームに進化させていきたい。データドリブンな改善ができる体制、文化を作っていけるような環境を整備したい」と意気込む。

ファミリーマートとフューチャーアーキテクトは24年2月、配送DMPに続いて、調達から製造、品質管理のデータを蓄積、有効活用するプラットフォーム「調達・製造・品管DMP」を構築した。ファミリーマートと弁当や総菜などの「中食」の原材料販売会社、中食製造会社などがそれぞれ保有している原材料などの情報をため込み、迅速な共有と継続的な業務改善への活用を後押しするのが狙いだ。まさにデータドリブンな事業展開を目指している。

(藤原秀行)

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