【独自】物流施設開発続く神奈川、常連と新規参入の双方が積極姿勢

【独自】物流施設開発続く神奈川、常連と新規参入の双方が積極姿勢

目を引く日本GLPの大規模プロジェクト、ヒューリックは複数計画

物流施設の旺盛な需要を背景に、神奈川県内で新規開発のプロジェクトが継続している。大消費地・東京に隣接し、高速道路網で首都圏から各地へつながることができるといった条件の良さに着目。常連の大手デベロッパーに加え、新規参入組も事業を展開しており、大量供給が当面続きそうな情勢だ。

「あの案件で神奈川の物流施設マーケットの様相が大きく変わった」。神奈川県の経済界関係者が指摘するのが、日本GLPが同県相模原市で展開してきた大型プロジェクト「ALFALINK相模原」だ。

ALFALINKは特定のエリアに大規模な物流施設を集中して複数建設し、様々な業種のテナントを呼び込み、自動化などの業務効率化を後押しするとともに、新技術創出や地域交流の拠点としても機能するという壮大なプロジェクトだ。相模原はキャタピラージャパンの事業所跡地を活用し4棟、総延床面積は67万㎡を超える。

これまでに3棟が竣工、最後の1棟も今年完成する予定。同業他社からはプロジェクトの巨大さに「全ての賃貸スペースを埋めるまでさすがに時間がかかるのではないか」といぶかしがる声も出ていたが、アマゾンジャパンが入居するなど、需要を確実に引き付けている。


22年に完成した「GLP ALFALINK 相模原4」(日本GLPプレスリリースより引用)

日本GLPは2021年6月には、同じく神奈川県の平塚市で、区画整理事業に参加する形で2棟に同時着工したと発表。トータルで延床面積は6万㎡超を予定している。東名自動車道や新東名自動車道という大動脈が走る上、圏央道の延伸で広域配送がより可能になってきたことが、開発意欲を高めている。

一方、三井不動産も昨年9月、神奈川県海老名市で「MFLP海老名1」が完成した。延床面積は12万㎡を超える。複数のテナントが入居し、竣工時点で満床稼働が確定済み。大規模な太陽発電を屋上で実施するなど、環境に配慮した「グリーンエネルギー倉庫」と位置付けている。

施設の目前には圏央道の海老名ICが位置しており、神奈川の交通アクセスの良さを体現したようなロケーションだ。同社は海老名市で新たに約3.7万㎡の「MFLP海老名南」の建設を進めており、24年3月末の完成を見込む。日本ロジテムの1棟借りが決まっている。

大和ハウス工業も横浜市都筑区で大型の物流施設「DPL新横浜1」「DPL新横浜Ⅱ」の2棟を、第三京浜道路の港北ICに近接したエリアで続けて開発。併せて延床面積が19万㎡に達している。Hacobuが開発したトラックの入場予約システムとオンラインチェックシステムを採用し、トラックドライバーの負荷を減らせるよう努めるなど、地の利の良さだけに頼らない独自の施設展開を進めている。

中規模の案件も有力

旺盛な需要を見て、新規参入したデベロッパーも神奈川に照準を合わせている。ヒューリックは22年5月に東京都江戸川区で第1号の自社開発物流施設が誕生、センコーが1棟借りし幸先良いスタートを切った。ヒューリックは決算発表の際、この案件に続く形で、22年3月に物流施設開発用地4件を首都圏で取得したことを開示済み。このうち複数が神奈川県内で占めているとみられる。

その中の1件として、相模原市で今春に着工する準備を進めている。鉄建建設が保有していたスポーツ施設を解体し、6万㎡超の物流施設を建てる計画で、竣工は2024年7月の見通しだ。JRの南橋本駅に近く、国道16号などの幹線道路にもつながりやすいことから、ヒューリックは広域をカバーする物流拠点として価値が高いと期待しているもようだ。

2022年にやはり新規参入した独立系不動産コンサルティング会社のクレド・アセットマネジメントは昨年末、1社専用型物流施設として、神奈川県厚木市で「CREDO厚木」の開発に着手した。延床面積は約1.7万㎡と中規模サイズで、今年11月に竣工する見込み。あるデベロッパーの関係者は「大規模な物件だけでなく、メーカーが自社専用として使うなど中規模の物流施設にもニーズは見込める」と同社の対応を評価する。


「CREDO厚木」の完成イメージ(クレド・アセットマネジメント提供)

ただ、22年に続いて23年も物流施設の大量供給が続く見通しのため、首都圏の物流施設市場は空室率の上昇が見込まれている。シービーアールイー(CBRE)によると、23年は首都圏全域で大規模なマルチテナント型の物流施設が過去最大の約301万㎡完成すると見込まれている。そのあおりで空室率は23年末で8.1%と約13年ぶりの高い水準になるとはじいている。

需給バランスが緩まざるを得ない情勢だけに、物流施設デベロッパーの間では「物流施設開発は立地の良さが引き続き最優先で重視すべきポイントではあるが、それだけでは絶対的に優位とはならなくなってくる」と予測する声が多く聞かれている。脱炭素化や従業員の働きやすさなどの付加価値を高める動きが、神奈川県内の物流施設開発でも強まりそうだ。

(藤原秀行)

物流施設/不動産カテゴリの最新記事