必要な時期に必要な場所で対応可能、鮮度保ち食品ロス削減
エア・ウォーターは11月26日、産業ガス事業で培った極低温技術と液体窒素の冷熱を利用し、青果物などを急速に冷却できるシステムを開発したと発表した。
今後、産地や事業者の協力を得て鮮度保持の実証試験を展開する予定。品種や収穫時期ごとに異なる青果物の鮮度保持条件を最適化してレシピとすることで、システムの利用拡大につなげていきたい考えだ。鮮度を維持し、食品ロス削減につなげることも視野に入れている。
近年の地球温暖化に伴う気候変動は、青果物の収穫にも大きな影響を及ぼしており、特に夏場の高温は収穫後の青果物を劣化させ、鮮度を落とす主要因になっている。
同社は、鮮度を保持するには収穫した青果物をなるべく早く冷却し、青果物そのものの呼吸を抑制することが重要で、設備の整った一部の産地では集荷場に固定式の予冷設備を備え、生産者から運ばれてくる青果物を予冷したのち保冷車で出荷するケースがあるものの、設備が高額であるにも関わらず稼働時期は収穫時期に限られたり、年間を通して高い電気代を負担しなければならなかったりするといった産地の課題があったと指摘している。
同社は祖業の産業ガス事業に加えて、青果物の栽培、流通、加工、販売を手掛けるアグリ&フーズ事業やコールドチェーンを担う物流事業をグループ内に有することで、青果物の鮮度保持に関わる現場の課題を自らの経験として把握。課題の解決のために、液体窒素の冷熱、極低温技術など、グループ事業が保有する豊富な経営資源を融合、有効活用し、急速冷却システムを生み出すことに成功した。
急速冷却システムは、グループのエア・ウォーター北海道・産業ガスの極低温技術を活用し、液体窒素の冷熱を短時間で効率的に青果物に供給できる可搬式装置。
液体窒素式の場合、簡単な構造でマイナス196℃での蒸発潜熱と顕熱による大きな冷熱を供給することが可能。この冷熱を活かし、従来の機械式冷凍機では8時間要する冷却時間が1時間まで短縮できたことを実験で確認したという。
システムは可搬式のため、酷暑期間中に小売店舗等のバックヤードでの一時的な仮設冷蔵庫としての活用も可能と想定している。
「急速冷却ユニット」外観図
「急速冷却ユニット」外観写真
将来は急速冷却システムの自社運用に加え、産地の要望に応じたシステムのレンタルや青果物流通企業への販売のほか、急速冷却システム向け液体窒素の販売、産地予冷を活かした海外への国産青果物の輸出、鮮度の良い原料を用いた高級食材への加工といった幅広い事業展開を目指す。
(藤原秀行)※いずれもエア・ウォーター提供