走行する大型部品運搬台車からのリアルタイム映像伝送に成功、造船所クレーンのオペレーター室と地上の安定通信などに活用期待

走行する大型部品運搬台車からのリアルタイム映像伝送に成功、造船所クレーンのオペレーター室と地上の安定通信などに活用期待

AiTrax、ドローン編隊管理などにも波及可能と想定

情報通信システムの開発などを手掛けるAiTrax(エイトラックス、神奈川県鎌倉市)は5月22日、名村造船所伊万里事業所(佐賀県伊万里市)の実稼働工場敷地内で3月16~18日、走行する大型部品運搬台車に搭載したWi-Fiアクセスポイントを介した映像のリアルタイム伝送に成功したと発表した。

台車の走行中に接続先アクセスポイントが順次切り替わる過酷な環境下でも、映像の途絶を感知させることなく通信を維持しており、実運用に耐えうる水準であることを確認できたと成果をアピールしている。

AiTraxは今回の実証成果を踏まえ、造船所クレーン(高さ50〜80m級)のオペレーター室と地上間の安定通信をはじめ、港湾・建設・土木・社会インフラ分野への横展開、AGV・ドローン編隊との連携システム開発を順次進める構え。

また、IEEE国際標準規格に準拠したこの技術の海外展開についても、ブラジルを起点としたグローバルサウスへの普及を推進していくことを念頭に置いている。

実証では、稼働中の工場敷地という制約上、台車への機器搭載は実工程の合間を縫った限られた時間内での作業となった。

搬送物が数十tに及ぶ大型造船部品のため、アクセスポイントやネットワークカメラの設置場所は積載物との接触を避けるため車両前部の外部内側に限られ、アンテナ本来の電波放射特性が十分に発揮されない可能性が事前に懸念されていた。

加えて、走行中は積載物の金属材質による電波遮蔽・反射が刻々と変化するという、通信の安定維持が極めて難しい条件下で実証に踏み切った。

さまざまな制約があったにもかかわらず、安定した映像伝送を実現できたという。AiTraxが3年間の研究開発を通じて蓄積したアンテナ選定とファームウェアパラメーターの最適化に関するノウハウが実環境で機能したことを示したと強調している。

令和5年度(2023年度)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のSBIR推進プログラムおよび令和6〜7年度(24~25年度)国土交通省交通運輸技術開発推進制度における3年間の国家プロジェクトの集大成として成果を得た。

AiTraxが独自に開発した「パスコスト基軸型オンディマンドアルゴリズム」は、電波強度のみで経路を判断する従来製品とは異なり、スループット・遅延・パケットロス率などを統合したパスコストをリアルタイムで算出し、ネットワーク全体として最適な経路を自律的に選択。

この仕組みにより、工場敷地内(総延長約1200m)でもミリ秒単位で経路切替と安定した映像伝送を実現した。

名村情報システムが協力し、今後の台車位置測位やクレーンと地上間の情報連携などに技術を活用していくことを目指す。

「移動体がネットワークノードを兼ねながら安定通信を維持する」仕組みは、造船所の台車以外にも、産業界全体に広く応用できると想定。例えば、AGVや自律移動ロボットが現場を移動しながら安定通信を維持できることで、これまで通信断絶が最大の障壁となっていたロボティクスの実用展開が現実のものになると見込む。

また、現場近傍のエッジサーバーへのリアルタイムデータ伝送が途絶えなく維持されることで、AIカメラによる危険検知や設備の予兆保全が現場で完結するエッジコンピューティングの実現を通信基盤として支えられると見込む。

さらに、ミリ秒単位の経路切替は、複数のドローンが動的に編隊を変化させながら協調して作業を行う編隊運用でも、各機体との通信継続性を確保するための通信基盤として直接適用できるとみている。

(藤原秀行)※いずれもAiTrax提供

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