【現地取材】三井不動産、神奈川・海老名で竣工した「グリーンエネルギー倉庫」公開

【現地取材】三井不動産、神奈川・海老名で竣工した「グリーンエネルギー倉庫」公開

「ZEB」認証取得とグリーン電力提供でCO2排出量実質ゼロ実現

三井不動産は9月20日、神奈川県海老名市で同日竣工した新たなマルチテナント型物流施設「MFLP(三井不動産ロジスティクスパーク)海老名Ⅰ」をメディアに公開した。

施設自体で再生可能エネルギーを積極的に利用するほか、同社グループが展開している独自の「グリーン電力提供サービス」もテナントに提供するなどして、省エネと環境負荷低減に注力した「グリーンエネルギー倉庫」を体現しているのが特徴。併せて、使用開始前の施設を地域の子供たちに開放し学びの場を提供するイベントを行うなど、街づくりを通じて地域への貢献を図る。

現地で同日、記者会見した同社ロジスティクス本部ロジスティクス事業部事業グループ統括の田中耕一郎氏は「今後も環境配慮型の物流施設を標準としていけるようにしたい」と語った。


「MFLP海老名Ⅰ」の外観(左)。右は日差しが差し込んでくる方向によって表情が変わるようにした木調ルーパー(三井不動産提供)


圏央道の海老名ICに隣接


倉庫スペース

「MFLP海老名Ⅰ」は地上6階建て、延床面積は12万2180平方メートル。複数のテナントが入居し、満床で稼働することが確定している。圏央道の海老名ICに隣接し、首都圏の広域をカバーできるほか、中部圏や近畿圏へのアクセスにも強みを持つ立地。JR・小田急の厚木駅から徒歩11分で人材確保にも優位性があると見込んでいる。

快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の認証を取得。屋上に太陽光発電パネル約6000枚を設置し、施設内の電気を100%賄う。各種の創エネと省エネの取り組みにより、建物全体の基準排出量と比較して122.6%のCO2削減を実現した。

事務所部分については、直径約15センチメートルの杭44本を地下約100メートルまで打ち込み、地中熱を使うことで空冷エアコンより30%以上の省エネ効果を生み出す「地中熱ヒートポンプ」や、湿度と温度を別々に調整可能で標準エアコンより20%程度省エネ効果を持つ「デシカント空調」といった省エネアイテムを採用、CO2排出量を旧来比で50%以上減らしている。


環境負荷低減と省エネの取り組み(三井不動産提供)

また、隣接する海老名運動公園との緩衝エリアに植樹し、敷地全体の約2割に相当する約1万平方メートルを緑地化。最大貯水量2100立方メートルの雨水貯留池も整備し、景観に配慮するともに、雨水をいったん貯めた上で緩やかに外部へ排水できるようにしている。

共用部では事務所スペースに配管などが見えるスケルトン天井を取り入れ、窓も大きくして開放感を持たせているほか、カフェテリアの一角にウェブ会議も可能な個人ブースを導入。最上階は相模川越しに丹沢連峰や富士山を望めるスカイラウンジを設置した。屋上はスカイデッキを設け、スノーピークビジネスソリューションズの監修の下、物流施設として初めてテントやテーブルなどを常備、交流会や懇親会などのイベントを行えるよう配慮している。災害時には炊き出しなどに使うことが可能。


屋上のスカイデッキから山並みが望める


屋上に敷き詰められた太陽光パネル(三井不動産提供)

三井不動産グループが北海道に保有している森林の間伐材をエントランスやラウンジに使い、柔らかな雰囲気を醸し出せるよう工夫している。BCP対応としては、72時間対応の非常用発電機、免震装置、洪水の発生を想定した地盤高さの設定などを施している。


ラウンジに使われている間伐材


ウェブ会議が可能な個室スペース

感染症対策として、エントランスに体温測定機能付きの消毒液ディスペンサーを設置しているほか、非接触型のセキュリティーゲートやエレベーターを採用。ラウンジを異なるフロアに分散することで従業員らが密集するのを回避できるようにしている。


サブラウンジのインテリア(左)とスカイラウンジのインテリア。「Feeling Natural」をコンセプトに掲げ、木の肌色を生かすなど、外の風を感じられるような明るく親しみやすい空間にするよう努めている(三井不動産提供)


木々が迎えるエントランス(左)と、豊富な樹種を誇る植え込み(三井不動産提供)


施設の外観(左)と、日鉄エンジニアリングが採用した、常に安定的な免震性能を発揮する「球面すべり支承(NS-SSB)」(三井不動産提供)


海老名運動公園との間に設けた緩衝帯の「グリーンインフラ」(左)と景観に配慮した雨水貯留池(三井不動産提供)


スケルトン天井や大きな窓を採用した事務所スペース(左)と、スカイデッキ横に整備した屋上緑化スペース(三井不動産提供)


スカイデッキでのテントなど活用のイメージ(三井不動産提供)


スカイデッキとスカイラウンジの位置(三井不動産提供)


(左から)浸水対策、免震装置、非常用発電機(三井不動産提供)


(三井不動産提供)


位置図(三井不動産提供)


全景(三井不動産提供)

(藤原秀行)

物流施設/不動産カテゴリの最新記事