日本初の被災地域へのドローン定期物資輸送、合計28フライト・総重量100㎏を無事完了

日本初の被災地域へのドローン定期物資輸送、合計28フライト・総重量100㎏を無事完了

米衛星高速通信サービス活用、遠隔操作も

埼玉県秩父市でゼンリンやKDDI、エアロネクストなどが連携して展開していた日本初の被災地域へのドローンを使った定期物資輸送に関し、ゼンリンは4月5日、予定期間の配送を完了したのに伴い、成果を公表した。

配送はこのほか、KDDIグループでドローン関連事業を担うKDDIスマートドローン、生活協同組合コープみらい、ちちぶ観光機構、源流郷おおたき、ウエルシア薬局が参加。災害に見舞われた同市中津川地内にドローンで生活物資を定期的に配送する「&(アンド)プロジェクト」を1~3月に実施してきた。

中津川地内のエリアでは2022年9月に土砂崩落が起き、途中の道路でトンネルが崩落、現在も通行が規制されている。各者が連携し、トンネルの上空をドローンが飛行して食料品や日用品、医薬品などを迅速に輸送、住民の生活を支援するのが狙い。

ゼンリンは、ドローン輸送に際し、不可欠な安定した通信環境を確保するため、KDDIが利用契約を締結した米宇宙関連企業スペースXの衛星高速通信サービス「Starlink(スターリンク)」を活用することで、地形の特性などにより従来はモバイル通信が不安定だった環境下でもドローン運航が可能になることを確認できたと強調した。期間中、合計28フライト・総重量100㎏の輸送を無事成功させた。

3月2日には目視内でドローンが自動飛行する「レベル2」から、無人地帯で目視外飛行する「レベル3」の配送に移行。さらに、着陸地点に技術者を配置せず、東京都内から遠隔操作を実施、荷物の受け取りを中津川区長1人で対応した。

中津川地区の住民からは「週1回の定期配送が楽しみの1つとなり、不安な気持ちが和らぎ、心のよりどころにもなっていた」といった声が挙がったという。ゼンリンは「冬季期間の住民の方々の、より日常に近い生活環境づくりに寄与することができた」と総括した。


ドローン飛行の安全上、着陸地点半径30m以内に人が立ち入らないよう、規制線のロープを張る中津川区長


東京の遠隔運用者と離陸地点スタッフの3者間通話で、着陸地点の状況確認に応じる中津川区長

ゼンリンなどは得られた運用ノウハウを生かし、災害などの発生時や、通信環境・生活交通・物流など生活インフラの維持に課題を抱える中山間地域に向け、安定したドローン配送を実現するソリューションの構築を検討していく構え。

■配送フロー
(1)住民は、電話などで事前に商品を注文。
(2)コープみらい・ウエルシア秩父影森店、ファミリーマート道の駅大滝温泉店が、注文商品をピックアップ。
(3)各社トラックで道の駅大滝温泉まで配送。
(4)ちちぶ観光機構が、各社の注文品を個人ボックスごとに箱詰め。
(5)注文商品をドローン離陸地点まで配送。
(6)注文商品をドローンで配送。
(7)中津川地内の区長が注文商品を受け取り、各世帯まで商品を配送。

(藤原秀行)※いずれもゼンリン提供

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