upr、アクティブRFIDタグ使った牛の発情・体調不良自動検知へ実証実験開始

upr、アクティブRFIDタグ使った牛の発情・体調不良自動検知へ実証実験開始

物流技術を活用、畜産業界の人手不足カバー

ユーピーアール(upr)は7月14日、岩手県の広大な牧草地で一般農家の牛を預かり、放牧飼育を行う乳牛雌哺育育成事業を展開する岩手県葛巻町畜産開発公社(岩手県葛巻町)と共同で、300頭以上の放牧牛を対象に「DXタグ」を活用した発情・体調不良検知と所在管理の自動化に関する実証実験を8月に開始すると発表した。

物流で蓄積した経験やノウハウを生かし、畜産業界の人手不足への対応を後押ししたい考え。


DXタグを牛に装着したイメージ(upr提供)

畜産業界は少子高齢化の影響で、畜産業から退く人が増加する一方、新たに参入する人の確保が困難になっており、深刻な人手不足に直面している。農林水産省の調査によると、基幹的農業従事者数は2015年から22年にかけて50万人以上減少した。

牛の発情検知には、経験や知見に頼った目視による検知が主流だが、夜間に発情することも多く、人による目視では見逃すリスクがあることが課題となっている。一度発情を見逃すと、次の発情まで約3週間待つ必要があり、その間の飼育コストや飼料費が追加で必要になってしまう。

世界情勢の変動は輸入飼料の価格を大幅に押し上げ、畜産農家の経営を圧迫しており、草地や野草をえさとして利用することで飼料購入費を削減できる放牧が、有力な選択肢の1つとして注目されている。

畜産業界の人手不足、属人的な目視作業への対策として、発情検知ソリューションは既に存在しているが、牛舎での飼育牛に加えて放牧牛に対応したものは、あまり市場に出ていないのが現状。

放牧における発情検知を自動化し畜産業界の課題を解決するため、uprは葛巻町畜産開発公社の協力を得て、2022年10月に飼育牛の放牧地における所在管理の検討を開始。その後、牛舎にいる飼育牛を対象に「DXタグ」の振動センサーによる発情検知の現地調査を経て、放牧牛を対象とした実証実験に踏み切ることにした。

「DXタグ」は、物流現場で使用されている「スマートパレット」に搭載されているアクティブRFIDタグを小型軽量化し、さらに機能を追加した。「DXタグ」を牛の首輪に装着することで、牛舎での飼育牛だけでなく、放牧牛に対しても頭数管理、脱走牛の発見、発情・体調不良の検知を容易に行えるようになる。

「DXタグ」は受信機から最大約300mの距離まで通信可能のため、複数の受信機を設置することで、広大な牧草地に放牧牛が点在する場合でもデータを取得できると見込む。

当システムは、牛舎の場合は1頭当たり年間5000円(税抜)、放牧牛の場合であれば1頭当たり年間1万円(税抜)と、導入しやすい価格に設定。牛の飼育場所や施設の規模を問わない低価格のシステムとして、多くの畜産業者にとって利便性の高い選択肢になるよう配慮している。

今後は葛巻畜産開発公社と共同で、AIなどの先進技術も活用しながら発情・体調不良検知の解析ソフトを開発し、精度を高めていくことを目指す。さらに、牛の種別や飼育地域の違いに応じた検知アルゴリズムの開発も予定している。

(藤原秀行)

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