【現地取材】花王が愛知・豊橋で竣工の次世代型完全無人化倉庫をメディアに公開

【現地取材】花王が愛知・豊橋で竣工の次世代型完全無人化倉庫をメディアに公開

“運ばない物流”コンセプトに工場とメーカー物流、卸物流を物理的にも一体化

花王は3月27日、庫内作業の完全自動化を可能にした「豊橋工場 次世代新倉庫」(愛知県豊橋市)の竣工式を開催した。同日、メディア向けに庫内設備のデモンストレーションを行い、同社のロジスティクス構想を説明した。

新倉庫は化粧品を製造する豊橋工場に隣接し、出荷バースの目の前には花王の中間物流を処理する「豊橋LC(ロジスティクスセンター)」が位置。“運ばない物流”をコンセプトに工場とメーカー物流、卸物流を物理的にも一体化したのが特徴だ。

竣工式に出席した花王の田端修常務執行役員SCM部門統括は、豊橋工場の次世代新倉庫を同社のモデル拠点と位置付けていると説明した上で「現時点で計画が固まっているわけではなないが、個人的には今後2~3年をめどに同様の機能を持った新倉庫を全国に展開したい」と抱負を述べた。


倉庫の外観(花王提供)

パレットにはRFIDを装着し、工場の出荷から新倉庫を経由してLCに入庫するまでのステータスをリアルタイムに把握。生産、メーカー物流、卸物流の三層の計画を連携させ、最適化できるようにしている。

庫内にはパレット自動倉庫、パレタイズ/デパレタイズロボット、無人搬送車(AGV)、有軌道台車(STV)を導入。入庫から出荷までのオペレーションを完全に自動化した。遠隔管理で24時間稼働させることが可能。従来の運営方法では30人程度の作業員が必要だったが、業務の無人化を可能にした。

出庫ラインからフォークリフトでパレット積み貨物を取り出し、トラックの荷台に積み付ける作業も自動化する計画で、豊田自動織機の技術支援を受け自動運転フォークリフトの運用実験を続けている。これまでのところ、問題なく運用できているという。


トラックの荷台から降ろしたパレット積み貨物の搬入口となる「トラックアンローダー」。パレット貨物を入庫ラインに流す


入出庫ライン。パレット貨物をダイフク製STVで搬送してパレット用自動倉庫に格納する


AGVエリア。Mujin製のアーム式パレタイズ/デパレタイズロボットとAGVを組み合わせて運用、少量多品種製品のパレットへの積み付けと荷降ろしを高速で同時に処理する。普段は完全に無人なので庫内の照明も落としている

積み付けの工程も本稼働すれば全てのセンター業務が自動化・デジタル化され、入出荷などの計画精度が向上する見通し。

トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」も意識して、Hacobuのバース予約システムを採用。トラックの入場ゲートに装着したカメラが車両ナンバーを自動認証、大型のデジタルサイネージに出荷口の番号と構内マップに経路を表示してドライバーに行き先を支持する。

車両受け付け情報はそのままフレームワークスが開発した倉庫制御システムに送信し、パレット自動倉庫が即座に出庫を開始、車両が入場してからわずか数分で最初のパレットが出荷口に自動で届く。ドライバーの荷待ちをほぼ完全に解消できるという。


空パレットの段バラシ/段積み機


ミルフィーユ段積み機。ケース1個単位の出荷に対応する。少量出荷品は1面積みのパレットをミルフィール状に段積みしてまとめてシュリンク包装する。パレット1面に満たない注文は段積みの最上段に載せる


出庫ライン。パレット積み貨物が2段積みで出庫口まで運ばれてくる。出庫口上部のモニターに、荷物を積み込む車両の番号と出荷準備の進捗を視覚的に表示する


右が新倉庫、左が花王ロジスティクスの運営する豊橋LC。将来は花王以外の製品も同LCで取り扱うことを想定している

(大矢昌浩)

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