「宅配ボックスあり」の賃貸物件、全体の4割に:LIFULL調査

「宅配ボックスあり」の賃貸物件、全体の4割に:LIFULL調査

設備条件なしより月額賃料1.3万円上昇も、6割が「必須」条件に設定

LIFULL(ライフル)は10月20日、運営している不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」で実施した「宅配ボックスあり」物件の市況に関する調査結果を公表した。

首都圏1都3県の賃貸マンション・アパートの中で「宅配ボックスあり」の物件が占める割合は4割に到達。居住者のニーズが高まっていることをうかがわせた。

1都3県の賃貸マンション・アパートの中で「宅配ボックスあり」の物件割合を月ごとに調べたところ、2023年3月以降、緩やかに増加し、9月には直近1年で最高となる41.1%となった。

LIFULLは「新型コロナウイルス禍におけるインターネット購入・非対面受け取りの需要増で爆発的に普及が進んだ宅配ボックスは、企業の出社回帰も相まってか、今現在においても引き続き普及が進んでいるようだ」との見方を示した。

LIFULL HOME’Sでは物件探しの検索条件を「できれば/必須」で優先順位付けをして検索できる「できれば検索」の機能を搭載している。ユーザーが物件を探す際に「宅配ボックスあり」を「必須」として選択した割合は、23年6月以降、伸びが大きく、直近では6割近くが「必須」を選んでいることが分かった。

LIFULLは「宅配ボックスあり」物件の割合が4割程度だったのに対し、「必須」を選択した人が6割近くになっていることに触れ、「ニーズに対して供給はまだ足りていないと言えそう」と分析した。

1都3県の「設備条件なし」と「宅配ボックスあり」の家賃相場を出したところ、「設備条件なし」は7万円だったのに対し、「宅配ボックスあり」は8万3000円になった。月額で1万3000円、年間では15万6000円の差となる。

LIFULLは「決して誤差ではない」と強調。政府が「2024年問題」対策の一環として、今後実施を予定している置き配のポイント還元や再配達を依頼する手間、配達時間に在宅していなければという心理的負荷を考慮すると、「宅配ボックスあり」物件の人気が続くと展望した。

調査概要
<対象エリア>1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
<対象物件>LIFULL HOME’Sに掲載された築40年以内、駅徒歩20分以内、15平米以上40平米未満の居住用賃貸物件
<対象期間>2022年10月~2023年9月
<家賃相場>月額賃料の中央値

LIFULL HOME’S総研の中山登志朗チーフアナリスト:コロナ禍の拡大~コロナ後の移動本格再開で、宅配ボックスの利便性が注目される

2000年以降分譲マンションに設置され始め、その利便性が注目されて短期間で“あって当たり前の設備”となった宅配ボックスですが、賃貸マンション・アパートには設置コストも相応にかかるため、新築時に設置するケースは増加しても賃貸物件全体にはなかなか普及が進みませんでした。

それがコロナ禍によって買物や飲食のための外出を控えるようになって以降、ネット通販や食品&日用品の宅配が爆発的に増加し、連動して宅配ボックスの設置も急速に進みました。しかし、宅配ボックス販売シェア大手のアンケート調査(※2)によれば、2022年末時点で宅配ボックスが設置されている物件に居住しているとの回答は39.2%、住居形態別では戸建て26.6%、マンション62.2%、アパート30.8%となり、依然として戸建てやアパートなどの宅配ボックス設置率は過半数を超えていません。

今回LIFULL HOME’Sでは、宅配ボックスが設置されている賃貸マンション・アパートがどれくらい掲載されているのか、そのシェアの変化を初めて調査したところ、時流を反映して直近41.1%まで拡大していることが明らかになりました。これはコロナ禍で進んだ宅配を前提とした生活様式の変化、さらにコロナ後の出社勤務の増加によって荷物が受け取りにくくなったユーザーが増えたことで、宅配ボックスへのニーズが切実なものになっていることの表れと見ることができます。

さらに、物流2024年問題への緊急対策として置き配ポイントが付与されることになり、これを契機として宅配ボックスの経済効果が高まることが見込まれるため、今後は分譲/賃貸、戸建て/マンション・アパートの別なく、安全に荷物を受け取ることができる宅配ボックスへのニーズがさらに高まることが確実視されています。

(藤原秀行)※いずれもLIFULL提供

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