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【独自取材】活況の物流施設開発に広がる資材高騰の暗雲

【独自取材】活況の物流施設開発に広がる資材高騰の暗雲

原油高や世界的需要急増が影響、工事遅延など懸念も

新型コロナウイルスの感染拡大による“巣ごもり消費”の急伸などが追い風となり、活況を呈している賃貸物流施設市場だが、先行きに暗雲が広がっている。

原油などの原材料費や輸送費がかさみ、建築資材が軒並み高騰、工事の遅延などが懸念される状況となってきた。コロナ禍から経済が回復してきたのに伴い海外で急速に膨れ上がる鉄骨などの需要に、海上輸送が追い付けていないことも供給を制限する要素になっている。

建設・不動産業界からは「こんな異常事態が続けばオフィスビルなどが建てられなくなってしまう」と嘆きの声が漏れる。物流施設に関しては、足元では開発プロジェクトに大きな混乱は表面化していないが、新規供給の制約が企業の物流戦略に軌道修正を迫る事態とならないよう、今後デベロッパーなどが一段と対策を迫られそうだ。

「企業努力の範囲を超えてしまっている」

「原油価格の安定はコロナからの経済回復を実現する上で大変重要な課題であると思っている」。岸田文雄首相は11月24日、首相官邸で記者団に対し、原油価格上昇によるガソリンや軽油などの価格高騰を抑えるため、初めて国家備蓄石油の一部を放出する方針を発表した際、決意を述べた。異例の措置には市中での流通量を増やし、価格を抑えたいとの思惑がある。

経済産業省資源エネルギー庁によれば、11月15日時点の店頭現金小売価格は全国平均でレギュラーガソリンが168・9円、軽油が148・6円だった。いずれも11週ぶりに前週の数値から下がったものの小幅で、依然として高い水準が続いている。まさに岸田首相の言葉の正しさを裏付けているといえる。

原油価格は1バレル=70ドル台という高値が続き、沈静化の兆しが見えない。コロナ禍からの経済回復による需要急増や、世界的に広がる「脱炭素」の流れによる油田開発の投資控えという構造的な課題が現在の混乱を引き起こしており、他の原材料価格にも波及している。

「コスト吸収という企業努力の範囲を超えてしまっている」。ある不動産業界の関係者はため息を付く。建物の内装を仕上げるのに不可欠な鋼製の軽量下地材メーカーから世界的な需要増で輸入が難しくなっていることなどを理由に、製品価格を5割超値上げしたいとの依頼が入ったためだ。

メーカーは激変緩和として、数カ月かけて段階的に価格を引き上げることを提案しているものの、最終的に大幅なコストアップになることに変わりはない。この関係者は首都圏で不動産開発のプロジェクトに携わっているが「予算をオーバーしてしまう。工事を一時ストップすることも考えないといけないかもしれない」と顔を曇らせる。

別の建設業界関係者は、取引先の建材メーカーから全製品を12月の出荷分以降、一律2割値上げしたいと打診された。「値上げを依頼してきたメーカーは1社だけではない。施主からどうやって理解を取り付けたらいいのか…」。コストアップをカバーする手段は限られ、この関係者は頭を抱えている。

JLL(ジョーンズ ラング ラサール)が9月に公表したアジア太平洋地域の物流・産業用不動産市場動向に関するリポートは、大型物流施設の開発面積が東京圏で19年の200万平方メートルから20年に215万平方メートル、21年には250万平方メートル、22年には330万平方メートルに増加していくとみている。これまで需要の中心だった3大都市圏に加え、最近は九州や東北など地方圏でも先進的な機能を持つ物流施設の建設プロジェクトが相次いでおり、全国規模で物流施設の開発が活発化している。

大手物流デベロッパー幹部からでさえ「さすがにこの状況が何年も続くとは考えづらい」との感想が聞かれるほどの相当なハイペースに、資材高騰は冷や水を浴びせかねない。別のデベロッパー関係者は「いまのところ、物流施設に関しては工事の先送りや中断といった事態は起きていない」と語る。

物流施設は既に新規供給の拡大で開発用地が値上がりし、デベロッパーや建設会社が効率的な工法の採用や資材の早期調達など、コスト抑制に知恵を絞ってきていたが、今後さらに頭を悩ませる場面が増える可能性もありそうだ。

(藤原秀行)

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