ベンチャーのASFと共同開発、中国メーカーがOEMで順次供給
佐川急便は4月13日、神奈川県綾瀬市で、宅配に用いる軽自動車サイズの新たなEV(電気自動車)の試作車をメディアに公開した。
台湾塑膠工業(台湾プラスチック)グループでEVの開発・製造などを手掛けるファブレス(工場を持たず外部に製造委託する)メーカーのASF(東京都千代田区神田須田町)と共同で開発。中国の大手自動車メーカー、広西汽車集団がOEM(相手先ブランドによる生産)で量産、佐川の各事業所へ順次供給する予定。
佐川の本村正秀社長は同日、現地で記者団に対し、2030年度までに宅配用の軽自動車を全て今回開発しているEVに切り替える方針を明らかにした。日本政府が50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル」を目指す方針を打ち出しているのを受け、EVの積極活用で環境対応を強化する。
佐川は宅配用軽自動車を全てEVにすることで、グループが事業活動を通じて排出するCO2を年間で従来比約1割カットできると見込む。
開発を進めているEVは2人乗りタイプ。1回の充電で航続距離が200キロメートル以上と想定。改良を進めて性能を確定した上で、22年9月をめどに納入を始める計画だ。車体のメンテナンスはグループのSGモータースに加え、全国9600か所の拠点を展開しているJRS(日本ロードサービス)が協力する準備を進めている。
配送スタッフの安全性や快適性、作業効率向上に配慮し、荷台の下後方に台車や伝票を収めるスペースを設けたり、荷室内の照明を明るくしたり、充電時にUV(紫外線)除菌装置をタイマー稼働させられるようにしたりといった工夫を凝らす。車両や運行情報のデータはクラウド上で管理できるようにする構想だ。
佐川の本村社長は「宅配に特化した車両を作りたかったが、少ない台数ではメーカーが製造に対応できず開発を見送ってきた。ASFの協力を得て7200台という規模でも開発が可能になった。乗車するドライバーは誇らしい気持ちで日々の業務に取り組んでほしい」と語った。同席したASFの飯塚裕恭社長は「今後は超小型モビリティーや特殊車両、建機など幅広いジャンルの電動化にチャレンジしたい」と述べた。
佐川が公開した新型EVの試作車
荷台の下後方に台車などを収めるスペースを設け、荷室内の照明を明るくして作業しやすい環境を整備している
運転席
EVとの撮影に応じる佐川急便の本村正秀社長(左)とASFの飯塚裕恭社長
(塩津好恵、藤原秀行)