老朽船舶解体の作業安全性担保など義務化の「シップ・リサイクル条約」、25年6月26日発効へ

老朽船舶解体の作業安全性担保など義務化の「シップ・リサイクル条約」、25年6月26日発効へ

脱炭素新船への代替円滑化を期待

国土交通省は6月28日、船舶の適正なリサイクルを促進する「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約」(シップ・リサイクル条約)が2025年6月26日に発効することが決まったと発表した。

同条約は、船舶解体の労働安全確保と環境保全を目的としており、国交省は低環境負荷船舶への代替円滑化と循環型経済における脱炭素化に寄与できるとみている。

シップ・リサイクル条約はIMO(国際海事機関)で2009年に採択された。500国際総トン以上の全船舶を対象に、船舶に存在する有害物質などの概算量と場所を記載した一覧表「インベントリ」の作成・維持管理を義務付けることが柱。15か国以上が締結することなどを発効の要件と設定している。

国交省によると、老朽船舶の解体は日本に加え、1970年代以降は台湾や韓国が手掛けるようになり、80年代は中国も加わった。さらに90年代以降はインド、パキスタン、バングラデシュなども展開するようになったが、アジアの国々は労働者の安全確保や環境対策などが不十分で、解体作業時に多数の死傷事故が発生し人権団体や環境団体が海運国や造船国の責任を指摘するようになったことも受け、IMOなどで条約作成の機運が高まった。

今年4月には岸田文雄首相と世界最大の解体国バングラデシュのシェイク・ハシナ首相が会談。同国が今年早期の同条約締結を目指し、日本がバングラデシュの廃棄物最終処分場の整備などの支援を検討する旨の首脳共同宣言を出していた。

バングラデシュが6月26日に条約を締結。さらに同日付で便宜置籍船を多数保有するリベリアも条約を締結したことで、条約の発効要件を充足することになった。

国交省は条約発効により、安全で環境に配慮した船舶の解体が国際的に担保されるとともに、脱炭素化船などへの円滑な代替に向けた環境整備が進み、海上輸送のカーボンニュートラルの加速化にもつながることが期待できるとみている。


岸田首相とハシナ首相の会談の様子(国交省報道発表資料より引用)

(藤原秀行)

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