【独自・物流で光るCSR】倉庫内で障害者就労支援、「家族も一緒に働き見守る」場に

【独自・物流で光るCSR】倉庫内で障害者就労支援、「家族も一緒に働き見守る」場に

テイケイワークス東京とリハス、千葉・流山の日本GLP開発物件でお披露目

倉庫への派遣・業務請負などを手掛けるテイケイワークス東京と障害者の就労支援事業を行うリハス(金沢市)、日本GLPの3社は11月26日、日本GLPが千葉県流山市で開発したマルチテナント型物流施設「GLP ALFALINK流山2」内で障害者就労支援施設「リハスワーク流山 with テイケイワークス東京」の内覧会を開催した。

障害を持つ人の就労を後押しするのに加えて、家族が同じ物流施設など近くで働き、見守っていけるようにするのが大きな特徴。3社によると、物流施設内に就労支援施設を併設するのは物流業界で初めてという。

3社は今年8月、「リハスワーク流山 with テイケイワークス東京」を展開する方針を公表した。この日の内覧会には荷主企業と物流企業計25社の関係者が集まり、障害を持つ人の社会参加促進への関心が高いことをうかがわせた。12月2日にオープンを迎えた。


「GLP ALFALINK流山2」(日本GLP公式サイトより引用)


「リハスワーク流山 with テイケイワークス東京」の内部(リハス公式サイトより引用)

「見える・見守る就労支援施設」をコンセプトに設定した同施設は、障害者総合支援法に基づく「就労継続支援B型」事業所として展開。雇用契約は結ばず、利用者の障害の状態や体調に合わせて生産活動の場を提供し、工賃を支払う。

施設の運営はテイケイワークス東京とリハスが共同で担い、ALFALINK流山の入居企業などから委託されたラベル貼りや箱作りといった作業を利用者が請け負う。

将来は同じエリア内にある別の物流施設「GLP ALFALINK流山6」にテイケイワークス東京が借り受けた約1330坪の倉庫スペース(転貸部分を除くと約1000坪)を施設外就労先として活用し、作業を行うことも想定している。

さらに、希望すれば利用者の家族も同倉庫内または近隣の倉庫などで受け入れ、障害を持つ家族を見守りながら働けるようサポートする。

内覧会の冒頭にあいさつしたテイケイワークス東京の若月学代表取締役は、過去に同社グループで約1カ月半の間に50人以上の障害者採用を行った経験に触れ、「障害者雇用はわれわれ受け入れ側の体制の問題で、彼ら・彼女たちはきちんと生産性を生み出せる人材だ」と熱意を込めて語り、「リハスワーク流山 with テイケイワークス東京」の社会的存在の大きさをアピールした。


あいさつする若月氏


「GLP ALFALINK流山6」の倉庫スペース

企業のCSR遂行と障害者の社会進出を支援

近年、障害者の法定雇用率の段階的な引き上げが行われており、2024年度現在の2.5%から26年度には2.7%となる見通しだ。未達成の企業は障害者雇用促進法に基づき、不足する障害者1人当たり月額5万円の納付金を納めなければならない。改善が見られない場合、ペナルティーとして国が社名を公表することもある。

「リハスワーク流山 with テイケイワークス東京」は障害者の採用を検討している企業が自社の業務から実際に任せたい作業を切り出し、同施設またはテイケイワークス東京が運営するALFALINK流山6の寄託倉庫へ依頼する。作業は専門知識を持つスタッフが障害特性などを鑑みて振り分け、それぞれの利用者が自身に合った形で請け負う。

就労支援施設への依頼では1週間以上の納品リードタイムが必要となるが、流山6の倉庫に業務を委託する場合は、通常のリードタイムの中で運営側が作業を切り出して利用者に請け負ってもらうというやり方も可能だ。作業の依頼自体も障害者支援につながるが、企業は利用者が実際に作業に当たる様子を見学した上で採用を検討し、直接雇用することもできる。

テイケイワークス東京の担当者は「実務に貢献できる人材を当社が育成し、実際の能力を見て採用いただくことで、障害者雇用に踏み出していただけるのではないか」と話す。


内覧会に集まった人たち

厚生労働省の発表によると、就労継続支援B型事業所の平均工賃は月額1万7031円(2022年度)。専門家は経済的に自立して生活を送るには障害年金などに加えて5万円程度の収入が必要だと指摘しており、リハスでは実現に向け、企業への就職支援にも力を入れている。

取材に応じたリハスの藤田聖純執行役員は「物流倉庫内に施設を開設するのは初めての試みだが、当社であれば作業療法士などのスタッフが専門的視点で作業を分解して、それぞれの利用者に合わせた内容や方法を提案できる。さまざまな企業と連携しながら、障害を持つ方々の社会参加の機会を広げていきたい」と今後の活動に意欲をにじませた。

また、一般就職した障害者の半数以上が1年以内に退職している現在の状況を挙げ、テイケイワークス東京と連携することで、雇用後の定着率を高める支援につなげたいとの考えを語った。

(川本真希)

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