【再録!ロジイベント】ツナグテとTUMIXがウェビナーで物流データ連携の意義強調(12月17日)

【再録!ロジイベント】ツナグテとTUMIXがウェビナーで物流データ連携の意義強調(12月17日)

現場で紙が生む「分断」「接触」「二度手間」を解消

日本パレットレンタル(JPR)傘下で帳票の電子化などに取り組むTSUNAGUTE(ツナグテ、東京都千代田区大手町)と鈴与グループで配車管理・求貨求車システムを手掛けるTUMIX(ツミックス、静岡市)は12月17日、「社内と企業間の物流データ連携でデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現~非接触物流を実現する物流現場とは~」と題したウェブセミナーを共同開催した。

登壇したツナグテの春木屋悠人代表取締役は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、BtoCの領域を中心に進んできたデジタル化の機運が請求書や契約書の電子化などBtoBの分野にも表れてきたことに言及。「DXの実現には個社ではなく横のつながりが重要。企業、業界を越えて共同化していくことが大切だ。われわれはそのつながりを作っていく役割を果たしたい」とデジタル化推進に対する意気込みを語った。


春木屋代表取締役(中島祐撮影・2019年、クリックで拡大)

社内業務に効率化の余地多く

セミナーでは冒頭、TUMIXマーケティンググループ グループリーダーの小久保輝夫氏が「運送会社の情報連携とその効率化」をテーマに講演した。

TUMIXは鈴与の運送プラットフォーム事業開発プロジェクトから2019年に発足したスタートアップ企業で、グループの実運送会社の協力を得ながら開発した配車管理や求貨求車のシステムを提供。現在は1000社を超える登録ユーザーを抱えている。

創立メンバーの1人でもある小久保氏は、企業をまたぐ業務に比べて統制が取りやすいはずの社内業務に効率化の余地が多く残されていると解説。一例として、配車業務では多くの運送会社がエクセルシートや手書きで作った配車表をホワイトボードに転記して共有するとともに、ドライバーへの運行指示書を手入力で作成、指示を受けたドライバーは空白の用紙に運転日報を作成するといった実態を紹介した。

他にも、配達完了後に戻ってきた受領書を配車表と突合チェックして顧客へ郵送したり、請求書を作成したりするなど、業務ごとに個別の効率化は図られているものの、業務間の情報連携が希薄で無駄な作業が発生している点を挙げた。

この課題を解決するため、同社が「インプットの最小化」「情報連携の最多化」を目標に掲げ、配車担当者が直感的に使用できるデジタル配車板を軸としたクラウド型の業務支援サービスを開発した経緯を明らかにした。

TUMIXのデジタル配車板は複数拠点を含め必要なスタッフ間で共有し、運行指示は配車結果を基にドライバーのスマートフォンに地図などの添付資料と合わせて送信が可能。指示を受け取ったドライバーが運転日報を自動で作成したり、配車結果から請求書発行や入金管理も行ったりできるようにするなど、多様な機能を備えているのが特徴だ。配車板から簡単な操作で帰り荷を探せるほか求貨求車の機能を備え、協力会社の管理にも対応。経営者向けには乗務員別の売上高や顧客別の売上帳票をリアルタイムで出せるという。

小久保氏は「われわれ自身もグループに運送会社を抱えており、TUMIXのシステムも地に足が着いた実用性があるものだと自負している。それに加えてユーザーのご意見を受けて直近1年間で大小約400の改善・改修も実施している」と報告。デジタル化の効果をPRした。

ペーパーレス化はステップを踏んで進めるべし

続いて登場したツナグテの春木屋代表は「非接触物流を実現する物流現場とは」をテーマに据え、納品書の受け渡しなど企業をまたいだ情報連携における課題について語った。

この中で、関西大名誉教授の宮本勝浩氏監修の下でこのほど実施した工場や物流センター、配送センターで伝票を扱うスタッフ400人へのアンケート調査結果を公表。1人当たり1日平均40枚の伝票を約2時間かけて処理していることが判明したのを踏まえ、電子化による人件費抑制をはじめとした経済効果は日本全体で年間約3533億円に上るとの試算を公開した。

春木屋代表は、荷物と並行してバトンリレーのように紙の伝票が受け渡しされている物流業界の現状に触れ「紙を介することによって情報が分断されている。各社が自らの仕組みに関してはかなり洗練されたものを持っているのに、横のつながりがないため、一度データにしたものを紙の伝票に印刷して、それを受け取った側が再び入力してデータ化するといった煩雑なことが起きている。このような情報の分断がバックヤードの重労働の一因になっているのではないか」と指摘。ペーパーレス化によって、負荷を大幅に減らせるとの見解を表明した。

同時に、ペーパーレス化には「必要なステップがある」と明言。性急に紙の伝票を廃止するのではなく、まず紙の伝票を使いながら電子化の準備を進め、関係者間で相互に情報をやり取りできるようにした後でペーパーレス化に臨むのが重要だと持論を展開した。

その実例として、ツナグテが最初のステップで紙の伝票に印刷したQRコードを着側の拠点で読み取り、電子サインにより受け払いを行うようにした事例をプレゼンテーション。並行して伝票と入荷予定データの突き合わせ作業をシステムで自動化し、納品業者ごとに分けて保管していた伝票も電子データを残して廃棄できるようにしたことを説明した。

春木屋代表は「実は先ほどのステップよりも前に、現実的には伝票の形を統一していくことが重要。複写式をA4のカット紙にするとか、内容を合わせていくとか。それは言い換えれば『データの形をそろえていく』ということだ」と述べ、前段として共通の仕組みを普及させていく重要性を呼び掛けた。

最後に「今は約50社の方々が当社と取り組みを始めてくれている。こういった取り組みを進めて、世の中に事例を立ち上げていくことが必要だと思う。紙のない物流現場を2021年春に全国でスタートさせられると考えて動いている」と、計画しているスマホのみで伝票の受け払いを完了できるシステムについて展望を語り、セミナーを締めくくった。

(川本真希)

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