【独自取材】「テストフィールドがロボットの未来を切り開く」

【独自取材】「テストフィールドがロボットの未来を切り開く」

日本革新技術の発信地・福島県南相馬市リポート(後編)

この記事の前編:【独自取材】「“ロボットが日常に溶け込んだまち”目指す」

南相馬市では2017年以降、現在整備が進められている先端技術の研究・試験用施設「福島ロボットテストフィールド」(RTF)を中心に、物流・建設・農業などの各分野でドローンや無人搬送ロボット、水中ロボットを用いた実証実験が数多く行われている。リポートの後編はこれまでの主なプロジェクト、動向についてまとめた。


ロボットテストフィールドの鳥瞰イメージ

世界初の完全自律制御ドローンによる長距離配送に成功

【2017年】
・1月:自律制御システム研究所(ACSL)、楽天などが世界初のドローンによる完全自律制御での長距離荷物配送に成功。海岸線約12キロメートルを高度50メートルで飛行して北泉海水浴場で待つサーファーに温かい飲み物を届けた。
・10月:楽天とローソンが小高区で移動販売車とドローンを組み合わせた商品配送の試験運用を実施。
・12月:日本郵便、ローソン、東北日立、ZMPが「南相馬市スポーツセンター」敷地内で郵便物やローソンの商品を無人ロボットで届け先に配送することを想定した実証実験。

【2018年】
・11月:日本郵便が小高郵便局~浪江郵便局間の約9キロメートルを完全自律飛行のドローンで1日最大2往復の輸送を開始。第1便は同じく震災復興を目指す浪江町とのエール交換も兼ねて、双方の銘菓と子どもたちが書いたドローン、ロボットの絵を輸送した。

【2019年】
・1月:日本のドローン産業を代表する日本UAS産業振興協議会(JUIDA) 、日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、日本産業用無人航空機工業会(JUAV)の3団体がRTFで目視外飛行の実証実験に成功。ドローンの普及・発展に向けて鍵となる操縦技能・機体・運行管理システムについて評価基準の在り方を検討した。
・1月:日本郵便が原町区栄町の災害公営住宅でDrone Future Aviation(DFA)の無人搬送ロボットによる個宅配送で実証実験。ロボットが配送先の部屋前に到着すると受取人のスマートフォンに通知して荷物を引き渡す。この時はシルバー世代の地元夫婦が受け取った。無人配送の利便性を実感してもらうとともに、人が介在しなくても荷物の引き渡しがスムーズに行えることを証明。

関連記事:【動画】日本郵便が福島・南相馬市と浪江町で配送ロボット実証実験

・2月:東京電力パワーグリッドがドローンで送電線の資材などを山間部に搬送する実証実験をRTFなどで行うと発表。
・3月:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とNEC、NTTデータ、楽天などが、RTFで複数のドローンが同一空域で衝突せず飛行するための運航管理システムに関する実証実験。10機のドローンが同施設上空の約5万4000平方メートルで災害調査・警備・物流・郵便の目的でそれぞれ一度にドローンを飛行。約15分間のフライトを無事に終えた。

関連記事:【動画】日本初、ドローン10機が同じ空域で一度に飛行

・3月:楽天がRTFでドローンを活用した自動配送のデモンストレーションを実施。独自開発の新たな離着陸用設備「ドローンポート」に専用の機体が着陸し、搭載していた荷物を切り離すと自動的に設備内へ格納され無人のまま安全に利用者へ引き渡されるとの流れを再現した。
・4月:NEDOと南相馬市がRTFなどを活用してロボットやドローン関連の人材育成で連携すると発表。関係者との調整や各種プロジェクトの成果に関する情報発信などを役割分担しながら進めるほか、RTFを活用した人材育成講座を開くことを予定している。


建設工事の様子

ここに列挙したプロジェクトはごく一部だが、その中でもRTFにおけるドローン関連の実証実験が目立つ。また18年より企業などの実証実験は実用化に向けたより具体的な内容へと進展。東京電力パワーグリッドがドローンによる重量物輸送を検討するなど、これまで宅配・個配に重きが置かれていたドローンが企業間物流のツールとしても捉えられつつあることは、RTFで行われた実証実験の結果・成果が多様な産業・用途での活用可能性を探る呼び水になっているといえよう。

このほか今年3月にNEDOなどが行った運航管理システムに関する実証実験ではドローンの安全運航と信頼性に向けたエビデンスづくり、翌4月のNEDOと南相馬市の協定では従来の技術開発だけでなく人材育成などソフト面でも大きな期待が寄せられていることがうかがえる。

「RTFを名実ともに世界一の施設に育てたい」

南相馬市の門馬和夫市長はNEDOとの協力協定に当たって「RTFを復興に向けた起爆剤としたい。こういう先進的な施設や人たちが集まっていると子どもたちに教えることで、希望を持って自分もチャレンジしてみようという気持ちになるのではないか。RTFを名実ともに世界一の施設に育てたい」との考えを表明。自治体として地元はもとより世界に向けてロボット産業の振興・発展に力を注ぐ意向を示した。近い将来、南相馬市から物流の在り方そのものを変革するロボット、テクノロジーが生まれるかもしれない。

【福島ロボットテストフィールドの概要】

東西1キロメートル、南北500メートル、総面積約50万平方メートル。陸・海・空のフィールドロボットを中心とした実証エリアと本館機能を持つ研究棟などの開発基盤エリアで構成される。


総面積は約50万平方メートル

技術開発を行う研究棟なども設置

テストフィールドではドローン物流、ドローンならびに水中ロボットによるインフラ点検、ドローンと陸上ロボットを活用した災害対応の3分野を優先テーマとし、陸・海・空での実証実験やロボットの標準規格策定、製品認証、オペレーター検定が実施できる施設を目指す。

▽「無人航空機エリア」(国内最大のドローン飛行区域、滑走路、ネット付き飛行場を整備。飛行や衝突回避、不時着などの試験が可能)
▽「水中・水上ロボットエリア」(ダム、河川、水没市街地などの状況を再現できる試験場を整備)
▽「インフラ点検・災害対応エリア」(トンネル、橋梁、プラント、市街地などの災害・老朽化状況を再現可能な試験場を整備)
――に区分。

研究棟では国内外の研究者がロボットの基盤技術・要素技術を開発するために必要な研究開発、試作、基本性能試験評価、製品改良などを行う。テストフィールド内の「開発基盤エリア」に設置され、
▽防爆・耐火試験装置
▽3次元レーザー加工機
▽マシニングセンター
▽3次元光学計測装置
▽恒温試験装置
▽電波暗室
▽ロボット性能標準試験設備
――などの各種設備を備える。大規模な会議や展示会も開催する予定。

(鳥羽俊一)

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